メッセージ
           

ダン・エリクソン 教授

           

スウェーデン・マルメ大学カリオロジー講座
上級教授

詰めるむし歯の数が減る、痛みが少なくなる、より健康な歯ぐきになる、笑顔でより多くの歯がこぼれる、口臭が良くなる、 それらをより安い費用で実現する、そんな都合の良いことが可能でしょうか?答えはイエスです。そして、それは優秀で思い やりのある歯科医療者ならば行なうべきことです。現在、むし歯や歯周病といった歯科の病気に世界中のほとんどの人が罹っ ています。よって歯を被せたり、歯周病の手術をするための医療費は劇的に増加しています。歯科医院ではこういった治療を、 病気がひどくなってから行ないます。多くの患者は悪くなってから、むし歯があるとわかってから初めて歯科医院に行きます。 すると費用はずっと高くつくことになります。治療でむし歯の進行は止められず、古い被せ物はやり直しが必要になるからです。 賢明な方法は、悪くなる前に病気のリスクを見つけ出すことです。それから口のなかの状態を改善して病気を起こらなくする ことです。今日、リスクを評価するツールと病気を予防する方法は揃っています。治療の必要は劇的に減少させることができる のです。予防中心の歯科医院では何をするのでしょうか?典型的には、問診をして、だ液検査をして分析し、これら全ての データを使って「あなたの数値を知ること」、つまり個人個人で違うリスクプロファイルをコンピュータソフトウェアにより 描きます。それは患者さんにとってどんな意味を持つのでしょうか?その答えにはスカンジナビアからの一例を紹介しましょう。 Hausenらは2007年の論文で、歯科メインテナンスにおいてリスク評価をして個人に合わせた予防方法をした場合の4年間の 効果を発表しています。ハイリスク患者のみを研究しています。結果は、メインテナンスをしているハイリスク患者では、詰め物 や麻酔注射の必要は半減し、歯科医院に予防教育を受けるためにより多く来院していました。また、リスク評価をしたメインテ ナンス患者はそうでない患者に比べて掛かる費用も抑えられていました(Hietasaloらの2009年の論文)。よって、リスク評価 をしたメインテナンスは、安い費用でより健康的な歯を提供していました。さらに、スカンジナビアの多くの場所での経験で、 リスク評価に基づいた予防は長期的に費用効果があることが示されています。この方法を選択するのは難しいでしょうか?

グンネル・ヘンセル・ペターソン 先生

           

スウェーデン・マルメ大学カリオロジー講座
前主任

リスク検査とリスク評価は、自分のリスク因子をまだ知らない全ての人に不可欠なことでしょう。また、すでにリスク因子を知っている患者さんでも、生涯にわたってむし歯と歯周病を予防するために、それらをモニターし続けることが有益です。

           

若林 則幸 教授

国立大学法人東京医科歯科大学 理事・副学長

健康の管理は、自らの健康状態をよく知ることから始まります。そして、様々な数値とし健康の情報を知り、以前と比較することで理解が深まります。 う蝕や歯周病、歯の欠損など口腔(こうくう)の疾患についても同様です。健康である方こそ自らの状態を知り、生活習慣の改善を通して、すべての人が生涯歯で困ることのない社会を実現したいものです。リスク評価の推進を掲げるPSAPの活動を応援いたします。

           

林 美加子 教授

           

大阪大学歯学部附属病院長
大阪大学大学院歯学研究科 歯科保存学教室 教授
一般社団法人 ACFF 日本支部 理事長

臨床医と研究者の長年の知見より、「う蝕と歯周病は基本的に予防できる疾病である」ことがわかってきました。私は 大学では「臨床う蝕学」、「保存修復学」と「歯内療法学」を担当し、う蝕と歯内疾患の病因・病態論と診断・治療法を教えています。そこでは、臨床科目を学び始めた学生に、「100歳人生をう蝕にならずに過ごすことが、患者さんの究極の幸せであり、これこそが医療人として達成すべき目標である」ことを力説しています。患者さんの立場に立てば、う蝕と歯周病が予防できる病気であれば、当然のことながら、その方法を教えてほしいと思うでしょう。西 真紀子先生が主催されるNPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」は、患者さんに寄り添う立場で、この当然のことに真摯に取り組まれています。日本の国民皆保険制度は、国民の誰しもが医療を享受できる尊敬すべき理念のもとに構築されています。しかし、皆様がご承知のとおり、歯科医療については、50年前の設定当初のまま介入型治療に重点がおかれており、予防が充実しているとは言いがたい状況にあります。国民の疾病構造が大きく変わっている今こそ、予防できる疾患に先手を打つことが科学的であり倫理的であり合理的であると考えます。私が関わっている一般社団法人 ACFF 日本支部では子どものう蝕の撲滅を目指していますし、日本歯科保存学会が作成している「う蝕治療ガイドライン」では、予防の概念を大切にしたう蝕のマネジメントを推進しています。これらの活動は、まさに、西先生のNPO法人理念にも合致するものであり、患者さんの口の健康を守るために,同じ時代に活動できることは望外の喜びです。

           
           

野杁 由一郎 教授

新潟大学医歯学総合研究科 歯科保存学教室 教授
口腔健康科学講座う蝕学分野 教授

口腔バイオフィルム感染症という疾患名を見聞きしたことがある方はほとんどいないであろう。これは昨年度歯科医学会と日本歯科医師会が 共同で厚生労働省に上申した4つの新規口腔疾患名に含まれていたものである。むし歯と歯周病の共通の主因であるデンタルバイオフィルム (デンタルプラーク=歯垢)を1元化して捉え、予防・管理することで、両疾患の制御・抑制を目指そうという狙いがあった。
他方、首相官邸では、今年に入り“人生100年時代構想”会議が頻繁に行われている。その中で,生涯にわたるう蝕や歯周病のマネジメントを 促進し,生涯にわたる両疾患のリスクを広く認識させ,口腔を起点に健康の増進をリードすることが求められています。西 真紀子先生が主催されたNPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」は、患者ファーストの立場で、それらのニーズにジャストフィットした活動を 展開し、口腔バイオフィルム感染症の撲滅を目指した予防・管理を推進しています。簡単に言えば、このNPO法人は、日本の歯科口腔疾患医療 を先取りして(の旗頭として)運営されています。患者様の口の健康を守る本法人を応援します。

           

桃井 保子 名誉教授

鶴見大学 名誉教授 歯学部保存修復学講座
一般社団法人 ACFF 日本支部 監事
NPO法人 日本歯科保存学会 医療合理化委員会「う蝕治療ガイドライン作成小委員会」 委員

社会を支える多くの働き盛りの人々が、むし歯や歯周病に罹患せず毎日を元気に過ごすことができれば、社会の活力がどんなに増すことでしょう。 このことが,社会全体の労働生産性向上の一翼を担うであろうことも想像に難くありません。そればかりか、幼年期、学齢期、青年期と口腔の健康を 守り貫いたこれらの人々には、健康ではつらつとした高年期、そして尊厳に満ちた余生が待っています。人々が、こんな風にいつまでも歯を失うこと なく、健康な口腔を保持していくには、実は歯の萌出前から、産まれて死ぬまでの一生を通じてむし歯と歯周病のリスクを管理することが必要です。 なぜなら、むし歯や歯周病になるリスクは生涯にわたり変化するからです。現状では残念ながら、このリスク管理を含めた予防には公的支援が及んで いるとはいえません。しかし、国はいま、糖尿病、循環器病、がんなどと並んで、口腔の健康が人々の生活の質を確保するのに重要であることを深く 認識しています。疾病の治療に医療費をそそぎ込むことに限界を感じ、疾病を予防すること、疾病の重症化を回避する方向に医療施策の舵を切ろうと               しています。私は、ここに西真紀子先生率いるNPO法人「科学的なむし歯・歯周病予防を推進する会」の活動が大いなる追い風になると考えています。 経済格差や教育格差を乗り越え、国民にひとしく口腔の健康がもたされる世を手繰り寄せるために、私たちとともに歩んで下さると信じています。 天然痘はWHOにより根絶宣言が出され、つづいてポリオが根絶宣言目前です。両疾病とも病因が明らかでその予防法が確立しているからです。世に 蔓延しているむし歯と歯周病も然り。原因は口腔バイオフィルム感染でその効果的な予防もわかっています。この国からむし歯と歯周病が根絶される 日に向けて活動する「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」に心からのエールを送っています。

           

西野 瑞穗 名誉教授

徳島大学・中華人民共和国南通医学院・モンゴル国立医科大学 各名誉教授
徳島モンゴル医療交流協会 理事長

現代ではほとんどの方がモバイルを使っていらっしゃいますね?本NPO法人理事長 西 真紀子先生は、口腔保健分野に その技術を応用するモバイルヘルス(mHealth)の臨床研究をアイルランドで経験済みです。そのmHealthを乳幼児のむし歯 予防教育に利用し、LINEを使って、対象となる乳児の周囲の大人に定期的に教育メッセージを送り、乳児の99%に 4歳までむし歯を作らないというプロジェクトをスタートされます。小児歯科専門医・指導医であるわたくしはその活動に 大変期待しています。さあ、乳児をお持ちのご両親様、ご妊娠中の方々、このプロジェクトに参加して、生涯を通してむし歯を 作らない子ども達を育てましょう。

           

菅原 和士 教授

大米国NASA 研究員
日本工業大学 元教授
郷土文化継承保存会

健康な歯は国民生活の利益にも繋がる。昨今、経済的理由から、虫歯になっても歯科医院に行けない子供たちや高齢者が増えつつある。 予防歯科は日本にとって急務である。予防歯科を効率よく、市民に広く普及させるためには、歯科医師や市民による政官などへの働きかけ、 NPO活動、政策としての取り組みなどが必要と考える。「いつまでも健康で、綺麗な歯を持ちたい」のは日本だけでなく、開発途上国も含め、 全世界の人々の願いでもある。日本が予防歯科先進国になれば、今までとは違った形態の海外援助もできるだろう。日本に早急な課題として 問われているのは「予防歯科の社会基盤の構築」なのである。

           

仲野 和彦 教授

大阪大学大学院歯学研究科小児歯科学教室 教授

むし歯も歯周病も口の中の細菌が起こす病気です。これらの細菌は、小児期から思春期にかけて、周囲の人から伝播して口の中に 定着することが分かっています。自分のためだけではなく、周りの子どもたちやパートナーのためにも、自分自身の口の細菌の状況を 理解して、戦略的にコントロールしていくことが必要です。また、これらの細菌は、むし歯や歯周病を引き起こすだけではなく、 様々な全身の病気とも関連していることが分かってきています。「健康長寿」を目指すためには、これらの細菌をコントロールして、 むし歯や歯周病を予防していくことが重要です。そのためにも、この会の目指す理念は非常に重要だと考え応援しています。

ドーベン・ビルクヘッド 先生

スウェーデン・イエテボリ大学カリオロジー講座 前主任教授・名誉教授

フッ化物配合歯磨剤は、ほとんどの先進国で1960年頃、日本ではもっと後になって導入されました。今日、世界中で販売されている 歯磨剤の90%以上がフッ化物を配合していて、ほとんどがフッ化ナトリウム(NaF)です。他のフッ化物で歯磨剤に使われているものには、 フッ化スズやフッ化アミンがあります。歯磨剤にフッ化物を使用した開発者の一人に、スウェーデンのカリオロジーの教授、 Yngve Ericssonがいます。彼は、モノフルオロリン酸ナトリウム(Na2PO3F; MFP)がチョーク(炭酸カルシウム;CaCO3)と相性が 良いことを発見しました。CaCO3は最もよく使われた研磨剤でした。現在では、他の研磨剤、例えば、シリカ、炭酸水素塩、酸化アルミニウム、 炭酸マグネシウムなどがあり、NaFとは結合できますが、CaCO3とは結合できません。NaFはMFPよりもやや齲蝕予防効果が高いと考えられて いますが、その差は10~20%程度とかなり小さいです。